こりゃオモロイ、ライ小麦(トリケテール)

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8月1日の写真。
”ゲ・ゲ・ゲ・ゲっ”あっという間にでかくなったライ小麦。初めてつくってみたけど、”これは凄い!、素晴らしく逞しいDNAをお持ちじゃありませんか!穂だってゴツイ!
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”ライ麦の生産の安定性がないところの一つには、長身であり倒れやすいということですが、”短菅”といううたい文句にひかれて栽培してみたライ小麦。結局、胸元150cm以上にはなってしまいました。
しかし、ここからがこのライ小麦の真骨頂なのか、茎が全般的にしっかりしている。葉っぱも下葉までしっかりと緑色をつけ、葉緑体が残っている感じ。”ホホ~オモロイじゃないですか!”これは収穫までいかなきゃいけないでしょ!と思ったわけです。
ライ麦とは一味違うことはわかってきました。多くの方に愛される味であってほしいなと思うばかり。やっぱりこういうのは、全粒粉にしてパンに混ぜたり、ビスケット系もいいんじゃないかと期待してます。ご要望ある方、連絡お待ちしてますよ!
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妻もこれはドライフラワーにいいんじゃない?!とちょっと手狩りしました。実も入りだしているしその水分も高いことから重量感ありましたね~。

小麦の乾燥と選別作業

日本はアジアモンスーン気候というか、温暖湿潤気候なのは皆さん感じるところだと思います。
アメリカ、オーストラリア、カナダ、ヨーロッパ、世界各地で主食とされ栽培されている小麦。
世界で共通する小麦とはいっても、栽培される産地はほとんどが乾燥地帯に近いところだと思います。
なぜか?収穫の時に雨が多いところでは、品質が劣化しやすいからです。穂発芽とか、カビの問題だとかに繋がるんです。
いくら梅雨のない北海道といえども、条件は日本の中。ここに小麦の高コスト生産の一因があります。防除の回数の多さに加えて、収穫時に乾燥状態の良い環境で適期に収穫できないジレンマ。ヨーロッパでさえ、貯蔵するタンクはあっても、乾燥施設を多大にもつということはないんです。アメリカなんか産地によっては野積み状態。”え~大丈夫なのか?”と思いますが、天気がよいんでしょうね。
前置きが長くなりましたけど、収穫した小麦ですよ。製品水分は12.5%以下と決められているため、乾燥機で脱水作業をするんです。なぜこの水分なのか?ようは貯蔵期間がながくなるため、このぐらいの水分状態でないと保存状態に影響があるからなようです。
作業工程ですが、
1.ダンプで運ばれてきた小麦をホッパー(投入受け)に流します。
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2.粗選機で、軽いごみや雑草の種、細麦などその名の通り、粗いものを篩い分けします。ゴミ部分が多いと乾燥効率も悪い。
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3.乾燥機にて、乾燥を開始します。うちのは循環式乾燥機といって、外気を吸い込み、バーナーで燃やした暖気が乾燥層になった部分を通りぬけ、後ろに排出するやりかたで乾燥します。大抵はこのやり方だと思います。畑からの小麦が水分が一定の時は良いのですが、水分にムラが生じる場合は、”調湿”といって、蒸れない水分の16%ぐらいで一度保温を続けます。大体5時間ぐらいおいておくと、内部で水分のない雑穀が、水分のより多く持つ雑穀の水分を吸収することで同じ水分にするということです。
時間はかかりますが、一定の水分で製品ができるメリットと、品質向上につながるということで行なっています。
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4、12.5%以下になった小麦は、貯蔵用のコンテナ2tとかパック500kg~1000kgパックに詰め替えられ出荷となります。
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ほとんど全てが機械による選別作業ですが、次々と小麦を乾燥しなければならないため、最盛期になると小麦の投入もしなきゃなんないし、排出作業も同時にやらなきゃならないなど、現場はとてもあわただしさを増すのです。
でもコストかかりすぎですよ!選別作業はありでも、良質麦をとるために、乾燥作業は一大作業で経費も莫大。外国のように圃場乾燥ができるならそれが一番いいにきまってる。日本の気候にマッチした雨や病気につお~く、さらに需要者のニーズにマッチした品種のデビューが待ち遠しい。行政改革でも農業改革でも何でもいい。とにかく、優秀な品種”ハルキラリ”とか”きたほなみ”とか”北海261号”とかを早く市場に投入してほしい。燃料高、CO2の排出、環境保全からも、”いまそこにある危機”を”いまそこにある新麦”で乗り越えたい、そう思うのであります。

ホクシン 収穫開始!

7月29日、曇りのち晴れ曜日、午後からホクシンの収穫開始しました。
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子実水分は19%前後。穂もカールを描けば描くほど、水分は少ない傾向にあります。うちの町、本別のJAも28日の午後から収穫を開始しました。十勝管内の何箇所かで、27日に収穫を開始した模様です。
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コンバイン(収穫機械)の前についたヘッド(刈り取り部分)にギザギザの三角形のナイフが列に並んでおり、それがもの凄い勢いで横振動することで、茎の株元を刈り取ります。脱穀部分は大きなドラムとそれに沿うようにしたコーンケーブと呼ばれる格子状の鉄柵があり、そこで9割がたの小麦粒は脱穀されます。また内部では再脱穀するための装置と必要のない茎や殻を後部へ排出する装置や扇風機の装置がついているんです。
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コンバインの後部からは、風で送られた籾がらや茎、細麦とよばれるクズ麦や雑草の種など軽いものが排出されます。
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脱穀された小麦は、運転席の後ろのタンクに蓄積され、一杯になるとダンプに排出する。これが収穫の一連の作業です。
本州はうだるような暑さが連日だそうですが、十勝は避暑中どころかサブい!”キタ~~~!”というぐらいの夏はいつくるんでしょうか?なんだ秋風かと感じることも、どうした温暖化?まだ二三日にぐづついたのちに、本格的なホットな短い夏を感じたいと思うのです。まだ半分。頑張らねば。

Are you ready to cook flour of co-mugi?

小麦粉の限定販売をすることになりました!!!パチパチ。
なぜこの時期なのか?今年の収穫も始まってしまうこの時期に・・・。今回、フードソムリエ様で販売していただく限定各200袋は平成19年度(去年)、収穫したホクシン、キタノカオリ、春よ恋の3種です。
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今年(平成20年度)も今までの取り組みの中で、上記3種+ハルキラリ、ライ小麦、スペルト(観賞用)を作っていますが、多くの方に味や風味の違いや、パン、パスタ、お菓子、ケーキなど多くの料理に年度によってどんな違いがあるのかを聞いてみたいと思い、収穫時期となりました。
農家のプロだったら、毎年同じ品質のものを作らなければならない。それは生産者として基本なんだと思っていますが、土も違う、つくり方も違う、気候や風土も違う。もしかしたら、一粒一粒の麦に個性があっても不思議じゃないのではと思っています。”美味しくできれば最高!ですが、料理する人、食べる人が楽しみなら、ワクワクどきどきしながら、小麦粉で繋がっていけたらよりいいなと思っています。
まだまだ、至らない点、改善の余地もいっぱいあるはず。皆様のご感想お待ちしてます。

Are we ready to harvest wheat?

いよいよ、小麦を収穫する日がまじかです。どんなものが取れるかは、収穫してみなきゃわかりません。
といっても、機械は大型化され収穫能力はスコブルあるんですが、問題なのは作業が途中で止まること。機械は必ず、動いている時にしか壊れないという父の口癖。”そりゃそうだ”ってことですが、準備をおこたらないことが、作業をよりスムーズに、より安全にできることにつながるのも確か。
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収穫する機械や、畑の周辺の路面状況、運搬に使うダンプ、収穫した小麦を乾燥させる乾燥施設、一次貯蔵するためのコンテナ。”カイゼン”なんていう日本のビジネス英語があるほど、”こうしたら楽だな、もっと安全だな、もっと早くできるな”とか毎年あるわけで、壊してはつくるみたいなことをここ一週間、倉庫の中でやっています。今年は原油高騰対策、地球温暖化ならぬ乾燥工場温暖化リサイクル試験を行なう準備をしました。どれだけ効果がでるか、ワクワクしてます。
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”あせらず、騒がず、安全に”収穫できる準備、OK農場!

蝦夷梅雨?

23日の早朝から強くなった雨。この時期、十勝では熟期にはいったホクシンやキタノカオリはだんだんと色づきはじめ、穂から水分が抜け、青い穂先や茎が白くなり、水分が20%も近くなると、穂が稲穂のようにカールし始めるのです。それが収穫のサインでもあります。
今年の十勝の収穫前の天気は、雨が続いています。しかも蒸し暑い。いつもの抜けるようなピーカンの天気が続かない。確かに毎年、晴れたかなと思うと、どここらともなく突然入道雲が発生して、”大雨、雷、洪水警報”なんてことは、何回かはあるけれ曇天模様が多いのは事実です。
しかも、バケツをひっくり返したような雨のあとが晴れないのも、気になるところ。いつもなら、虹がでるくらいすがすがしい暑さとギラギラ太陽がでてくるのに~と思うが出てこない。
日本一の晴れ地帯、十勝にも暗雲?がたちこみ、梅雨を感じさせるムシムシする天気が続いてます。家の横の”春よ恋”もここ何日かの雷雨で一気に倒伏してしまいました。
7月17日の風景。まだ、倒れといっても許せる範囲。見た目は”波乗りムギ~”
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それから、7月24日。強い雨で、将棋倒しのようになり、通称”青畳”の状態に・・・。
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全ての畑ではありませんけど、小麦の倒伏は肥料、ムギの密度、雨、風の量、林や建物の近くなどの要因があります。倒れると、収穫の作業性は通常の3倍以上かかることになりますし、品質にも倒伏時期により影響がでたりします。
あと”春よ恋”は収穫まで2週間以上あり、”これ以上、雨はいらないですよ!”と神頼み。できれば、暖かな風がビュ~ビュ~吹いちゃったりして、畑での乾燥がいっそうすすめば最高なんです!とさらにお願いを申し上げました。明日、26日から1週間ほどは天気が持ちそうです。でも、暑くならんな~今年。

小麦の実のある生活

小麦たちはついに、実をつけました。
家のラインナップはご存知でしょうけど、こんなん作ってみましたよ。7月9日時点のホクシン、キタノカオリ、春よ恋、ハルキラリ、ライ小麦、どれがどれだかわかります?
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ホクシンですが、この時点での実はこんな感じ。ひと穂かでてきたもです。7月17日の写真で、まだ水分は40%ぐらいはあると思われます。ぷっくり実はできてますが、まだ青く、指でつぶすと容易につぶれます。
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下は”春よ恋”。まだ乳熟期で穂の下は形成されてますけど、上のほうは小さくこれから膨らむ感じ。
”小麦色の肌”っていいますけど、飴色のような感じになるのは、しいて言えば”春よ恋”かな~。
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それから、ライ小麦。春よ恋と比べると、特徴は出穂は5~7日ほど早い。しかし、受粉期は5日ほど遅いので、実の入りも遅い。なんだかんだ、ライ麦のように長身である。出穂以降の伸びがすっすっすごい。すでに150~160cmぐらいある。伸びすぎでしょ、アンタラ!!
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実はまだまだって感じ。受粉はしたから、ちゃんとなると思うんだけど・・・
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ふぅ~収穫まで、あともうちょっと。22日23日の雨でどのくらい、小麦が倒れるか心配です。雨にも負けず、風にも負けず、冬の寒さを耐えしのぎ、けっぱれ(がんばれ)麦たち!!!

ライ小麦の花

ライコムギにも、受粉の季節がやってまいりました~。といっても、春よ恋、はるきらりとほぼ同日スタートといっていいでしょう。写真は穂の真ん中のほうから、今にも葯がでてきそうなふくらみを感じさせます。
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初年度なのではっきりはわかりませんが、特徴らしきものといえば、出穂は春まき小麦よりも、3日ほどはやくそろう。遅れ穂もほとんどなかった。それから、穂が伸びた状態で開花が始まるようだ。出穂完了がほぼ9割以上終わってからでないと、受粉スタートしないのかな。
CIMG1708.JPGちょっと皆よりも、フライイング気味にスタートした花。写真は中央のぼやけた点みたいなのが葯。
出穂が始まって、晴れの日で5日ぐらいたったに、花がついていなかったので、まさか受粉しないわけじゃいだろうな?と初めてつくる小麦とライ麦の相(愛)の子に疑問符をもった。大丈夫だべか?7月4日から曇り小雨模様だぞ、早く受粉しちゃえよ、HOTな気候のうちにと、勝手にせかしたりして思った。
どんな実をつけるのでしょう、楽しみですの~。

春よ恋vsはるきらり

在来種でありパン人気種”春よ恋” VS 新品種、次世代期待のエース”はるきらり”
隣あわせで、バチバチとライバル意識と仲間意識を持ち合いながら、同じ畑にうわさってます。
7月初めに受粉時期を迎えました。播種日も同日の4月17日。肥料も農薬管理も全く一緒にやっています。この時期、春よ恋には必ずといっていいほど、ある異変が起きるんです。それは、トップリーフ(止め葉)が、黄色くなる現象。
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はっきり言って見た目は悪いです。農業試験場によると葉が黄色くなるのは、春よ恋の生理現象の一つで未だに謎の部分でもあるとのこと。しかし、黄色になるんだから、葉緑素が抜けてしまうことになり、光合成の働きが悪くなるように思われる・・・。
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初めて作った、6年前は何の薬害なのか、肥料の欠乏なのかと冷や汗をかきまくったことでした。見解は生理現象。ですが何か”春よ恋”のなかで急激に変化が起きているのは確か。受粉(恋愛)が成就して全ての力を子孫を残すほうに使おうとしているのか、それともただの登熟までの老化現象の一つなのか。
一方、40cmとなりの春まき小麦の新ホープ、”はるきらり”は平然と緑をキープしてるじゃないです!”すげぇ、このDNAはエエぞ~、タフだぞ~”と防除しながら思っていたわけです。全く、黄化現象がみられません。
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しかも、穂の段数も春よ恋が7~8段に対して、はるきらりは8~9段ある。登熟がどうすうむかわからいけど、単純に収量性は一歩リードしてるし、耐病・耐穂発芽性があるDNAだとすれば、すばらしいじゃないですか。あとは味てき、加工適正がどうかと思うけど、その辺は農家の腕もあるでしょう、きっと。
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基本的には、どちらも素晴らしい品種ですよ、もちろん。良い品種=安定生産=安定供給=安定価格=安定需要となるはずなんです。
PS:そういえば、此間のN43°の勉強会で、”はるきらり”の名付け親にお会いできました。これもちょっとした運命の一つなのでしょう。

N43°

北緯43度に位置する北海道、札幌市。この地で、パン職人やフリーキーなパン愛好家たちの集まりがあり、勉強会に参加させていただいた。その名も”ベーカリークラブN43°”。その中のメンバー、パン講師の森本先生にご紹介いただきました。森本先生の教室についてはこちら。http://www.cafetablier.com/
今回は”ライ麦パンの世界”と題して、パンと人、文化のフィールドワークをしながら文献研究をされている舟田詠子氏を講師に、あるアルプスの小さな村でのライ麦と人々の密接な世界をお話いただいた。
舟田先生についてはこちら http://homepage.mac.com/diedonau/
山岳地帯の日照条件、酸性土、寒さも厳しいところは、やはりライ麦が適しているというより、保存性のよいライ麦や放牧での生活しかないのだろう。種まき、草取り、収穫、脱穀、保存、製粉、釜作り、パン作りまで、すべて人力作業。半年が深く寒い雪の季節なら、残り半年で一年を家族で生活するための食料を自ら確保する。
自給自足とはいっても、”パン(食料)だけは本当に大切”皆でわけ合うこと。皆で助け合って生活すること、作物に感謝し祈りをささげること。収量の良し悪しは、1年生命を維持できるかどうかにも繋がることに直結している事実。写真でみるかぎりは、美瑛の丘よりも傾斜がきつく、はっきりいって、トラクターも転げ落ちるくらいのところ。実際はマンパワーのみのようだけど、日本の棚田や区画の悪い、中産間地域と言われることろだってたいした変わらない。
問題なのは、文明の進化とともに文化が失われていくことなのかなと思った。地元にも”馬頭祭”という農事祭りがあるけど、昔は全て牛や馬がトラクター代わり。大木を引っ張り、畑を耕し、干草や農産物を運んだり。作物にも、動物にももっと感謝しなきゃならんと舟田先生のお話を聞いて思った。
ちなみに、ライ麦パンの試食も行なった。ライ麦の独特の酸味、食事パンとして定着は私的にはむづかしいかもしれない。食物繊維やカロリーは低い様子。写真はN43のメンバーや舟田先生の知り合いのパン屋さんがつくられたもの。
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技術的なことや、パンの種類は全くわからないけど、なかにアーモンドみたいなものが入ったもの。
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しかし、私の大好きなライ麦パンは後にも先にも、アメリカのアイオワ州でお世話になった農家の親父さんの特性ライ麦パンだ。人口70人程度の片田舎の農家兼民宿みたいなところに約一ヶ月バイトさせてもらった農家。ご馳走はといえば、唯一、親父さんデービーットのライ麦パンだった。なんとも、甘くてほんのり酸っぱい、出来立てのライ麦パン。ライ麦の比率は今思えば、少なかったのかもしれないけど、一生忘れられないライ麦パンだ。きっと、ドイツ系移民の家系だから、お母さんにライ麦パンを習ったにちがいないと、今日の講話を聞いて思いだした。
うちのライコムギはどうなのかな?いづれにせよ、パン自体も文化として根付くこと。それは農耕民族の歴史に違いない。