今年の小麦の不思議はキタノカオリから始まりました。
7月下旬にスタートした”ゆめちから””きたほなみ”が細麦傾向だったので、”キタノカオリお前もか~”と思っていましたが、非常に良い小麦に仕上がってくれていたのです。
8月2日にロクロクエンジン始動。
本当なら1日で作業は終わりますが、できるだけ日光の当たりづらい林側のほうの生麦を完熟化させたいということで3日は自然乾燥において、8月4日に収穫を完了。結局今年の秋まき小麦は雨に一回もぬれず収穫。記憶にないくらい順調に秋まき小麦兄弟の収穫作業は終えました。あれ、トラブッてない?!どっかなかったかなと探すくらいの。
収穫はいろんな方達に応援してもらいましたよ~。
江別製粉の方、十勝でもインデペンデントなお菓子作りの匠、モントレゾールの小川さん、帯広はるこ“>まベーカリーの若手ブーランジェの青木さんと、妻と長女も。この二人はいつも応援してくれているはずですけど。
とにかく北海道の小麦粉ですからまずは地元から知ってもらうことが重要だと思います。美味しいパンやケーキを作る人は大勢います。その人たちに北海道の小麦って、うちの小麦って今年はこんな感じなんですと伝えられることが大きなモチベーションとなって明日の生産に励めるようになるんじゃないかと思ってます。
今年は運よく晴れ日もおおかったのもありましたが、楽しでもらって何よりでした。
さて、お題にあるように”キタノカオリの底力”ですが、なぜ良くなったのか実際にはまだつかめてません。
晩生の品種にとっては最適な気候に推移したのかもしれません。一昨年平成21年は大雨、去年22年は猛暑、今年23年はプチ猛暑?だったのかもしれませんが、過去2年は収量もとれず、21年は品質の面でも弱含みなところもありました。今年は収量と品質共に期待できそうです。
唯一気になる点は、フォーリングナンバー(FN値)という小麦のデンプン質検査。粘性をみるのですが、穂発芽すると粘弾力がなくなりFN値がなくなります。こうなると、生地ダレや麺のブツきれの発生となり後の製品に悪影響をだします。キタノカオリの場合、収穫時の雨にあたらなくとも、登熟期間のなかでの低気温の発生状況によっては、このFN値が上がらない現象がおきるという、非常に繊細なというか感じやすい品種になってるんです。
受粉時期からいままでそんなに高温推移でなかったのでもしかすると、FN値が基準を満たさない可能性があります。しかし、低温登熟による低アミロかもしれません。容積重(胚乳のつまりくあいを意味する)が高く、外観もよいとすればFN値がどうなるのか検査結果がたのしみなところなんです。
カオリちゃんの話はたびたびしますが、ヒヤヒヤさせられる”ジャジャ麦娘”のようにかんじるところがあります。
とにかく機嫌をいっきに損ねる。そうでなくても気温によっては品質に影響がでます。今年は昨年と比べると品質+量があるということで安堵しています。
でもこのドキドキ感と緊張感を持たせてくれるのが、カオリちゃんのいいところなのかもしれません。
これからきっと希少性のある小麦になるかもしれませんが、それでもこのカオリちゃんのファンは熱いです。
なにか職人魂というか、パンを作る人のハートをつかむ美味しさと面白さを兼ね備えているようです。
調整後のキタノカオリの写真。今年はゴツゴツとしながらも綺麗に膨らみました~。
今年も秋まくからね~。来年も元気にとれてね~と願いをこめつつ。
今年のカオリちゃんの底地力に感謝するのでした。<