農家は切っても育種は切るな!!

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今月の日本農業新聞の記事だ。
タイトルは”育種・防除に打撃 財源不足 揺らぐ継続性”という記事。
なんのことかというと、国の事業仕分けにより(財源がないからという理由で)、国の指定試験事業が1年前に廃止されたのだ。
これは未来に向けて重大な過ちを犯しているに違いない。
なぜか?何度も紹介しているとおり、小麦の品種選抜の何千から選びぬかれたエリート麦たちだ。
その基礎研究がなくなり、または短くなればその弊害はかならず現場で起きる。
収量性、生産性(耐病、耐寒、耐雪など)、製粉性、加工適正などありとあらゆる側面から、いいとこどりをしながら、選抜された小麦を人工交配で地道に生み出してきたのが今の品種たち。
畑では、高齢化や労働分配からも小麦の占める割合が今後も高くなる。同時に、病気や連作障害も付ものになりえる。
育種はその病気や天候変動、ニーズの多様性に応えるためにあるのだ。
正直、兼業農家にばら撒いている財源があるのなら、種を育てる機関と研究員に拝聞すべきだ。
日本の農業の将来に深くかかわっていくのは、この基礎研究部門だ。
さらに悪いのは、日本の小麦の等級制度だ。この制度は今や検査機器の整った現代では無用の産物でしかない。
一般には知られていないが、国策である小麦、米、大豆には穀物検定検査が行われている。
3つに共通するのは、見た目(外見)検査と成分検査だ。
小麦の場合は、粒度を検査委員の目視による等級検査と、成分はタンパク、灰分、FN(フォーリングナンバー)、容積重、DON検査がある。
重要なのは、もちろん成分。いくら外見がよくても、加工者側が困るような例えばFNの低い、低アミロの小麦では話にならない。
例えば、今北海道の小麦はジレンマに陥っている。自給率14%といわれているが、生産の9割を占めるうどん用中力粉は市場でダブついて価格が落ちている(もちろん外麦が安くなっている要因もある)。反対に、パン用中華麺用はいままでそう安定した品種がなかったのも手伝い生産量は少ない。
がしかし、それ以上に問題になりそうなのがこのパン用中華麺用小麦の外見の悪さだ。タンパク含量の高いパンや中華麺に使う強力小麦は硬質小麦ともよばれている。他方、ウドンのような中力粉は軟質小麦という。外見上は、軟質小麦のほうがよく、今後でてくる「ゆめちから」なんかは実は正直ブサイクなほうだ。
なぜ、粉々にする製粉してなんぼの小麦に外見検査が必要なのか?昔は検査機器もなかったので人間の目視は重要だったかもしれない。しかし、ほぼインスタントででてくる成分検査に対して、検査員の外見検査はなんの意味があるのか疑問だ。
そもそも誰もこの麦の等級制度は得をしない。生産者はもちろん製品率の低下⇒収量減=製粉会社への流通量限⇒価格高騰⇒消費者も買いずらい⇒市場がないとみなされ作付減。本当に自給率や農業を育てたいと思っているのであれば、この制度は撤廃すべきである。しかも全国少なくとも稲、大豆の作付があり、検査員が仕事を辞めることもない。痛みを伴わない構造改革なら早急にやるべきだ。外麦よりも検査基準は厳しいのだ。有事になったらきっと規格外の小麦も食用にまわるかもしれない。
とにかく、この制度も撤廃して育種に財源をあてるべきだ。問題は将来、必ず起きる。
育種に何十年もかかるのもわかる。でも等級検査を撤廃することにより、成分で勝負しようとする生産者も増え、地域での競争もはじまり、且つ消滅した小麦や品種改良中の小麦まで幅広い品種をつくれたら、今度は加工業者のなかでもオリジナル商品ができてくるはずだ。
”小は親を選べない”ように親の掛け合わせによっては、ブサイク麦になりかねない。
でも見た目なんか関係ない。問題は中身であり加工適正のマッチングなのに。人間だって同じ。
中身で勝負するのが本来である。
とにかく、育種をさらに発展させ、実用化をより充実させるには、柔軟性と多様性を認める麦政策にするべきだと切に思う。
気候変動やマーケットやニーズの変化は生き物だ。規制緩和とかそういう次元の話ではない。もともとの小麦の在り方を考えれば今の制度が間違っているのがよ~く理解できる。
俺の息子の代までには絶対に変えなきゃならない。
農家はきっても日本の種を創る切り札たちは絶対に残し発展させるべきである。

雨、雨、雨の5月上旬

ツツジも桜も、杏の花も咲く今日この頃。
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雨です。雨です。雨ばかり。
ここ3年はこのようにゴールデンウィークに限って雨という感じが続いてます。
うちもビートの移植作業は中断。
5月3日から進まず、まだ全体の4割ほどしか終わっていないスローペース。
でも、去年はこの時点で無理して植えたビートが途中でイカレテしまう失敗を起してしまった大反省点を振りかえると、
土が乾き適期に畑に入れるまで待つのも勝負のうちです。
まだ、予報では3日ほど曇り雨の天気。
週明け5月14日からフル稼働できていれば最高でしょう。
それまでに、出来る限りのことをと・・・。
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今年の雨も、平成21年の大雨も、平成23年の9月頭の極雨も降るのは天気の勝手。
我々ができるのはどう、それを畑からリリースできるかです。
2度あることは3度あって、その教訓を社長(父)はじめ、先人たちはやってきました。
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平らな畑に側溝を掘り、暗渠パイプを施工して水抜きをするのです。
今年はこの調子だと、そんな簡単に乾くわけもない感じの天気ですので、その昔の側溝の掃除。
ここ32番の畑は、下層土は湿性火山灰土、粘土けが強く暗渠なかせの土です。
道路横断している土管も、水位がギリギリの勾配。
下手すると逆流しそうです。
ユンボを使って、V字型に側溝を掘り下げ、水位を下げます。
途中で埋もれていた暗渠を見つけ、水はけの確認。
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今年の秋に良くなるのも、もしかしたら来年、再来年に結果がでるかもしれません。
でも、やらないよりはやったほうが絶対良いのです。科学性だけでなく、物理性も良くしないと総合的に根が張っていかないから。
こういう作業のできない沈滞ムードはその後一気に快晴に恵まれ、作業がぼわれます。
備えあればなんとかで、こういう努力が畑の基盤強化にはかかせないんです。