「きたほなみ」「はるきらり」という新品種の小麦があるのは3年ほど前からお伝えしてきました。
まだ、「はるきらり」はまだ全道でも数十件の農家しか作っておらず、”普及”という言葉さえもついていない小麦ですが、今後「はるゆたか」と「春よ恋」に負けじとでてくると思います。
この表は家系図ならぬ、麦系図。親のいいところ、美味しいところ、病気に強いところ。それぞれを兼ね備えた現代のハイブリッドです。
その裏側を探りに、産みの親に会いにいったのでした。
2月15日、JA本別農協青年部の役員研修として北見農業試験場を選定しました。
理由は、これからが旬と本番になる中力系「きたほなみ」とパン用強力小麦の「はるきらり」の栽培について聞きにいったのです。
北海道の小麦の最有力候補9割以上の作付を誇ってきた小麦「ホクシン」もここから生まれてきたのです。
考えてみたら凄いことなんです。日本の小麦の6割が北海道産。そのうちの9割以上を占める小麦を生みだすところです。もちろん目標とする品種は?
1.美味しくて
2.たくさん収量があって
3.病気につよい
製パン性もほら、春よ恋やはるゆたかに引けをとってません。
その昔は”農家が作りやすければそれで良い!”みたいなところもあったのかもしれませんが、”求められる小麦”が時代の主流です。
それも遺伝子技術をつかって、この小麦の良いところとあっちの小麦の良いところを掛け合わせてみて、最も理想とする小麦だけを選抜。その中でもさらに安定した品質や収量を確保できるものをだすんです。少なくとも10年。親株にも10年。20年越しくらいの長期スパンで育種は行われます。
ただ心配な点も。
国の出先研究機関だった北海道の各地区の研究所も時代の流れとともに、独立行政法人になりより実績が問われるようになりました。ここまでは大賛成なのですが、育種事業に対する国からの支援が極端にカットされている事実があります。これは国家の存亡にかかわる問題だと大げさでなく思っています。
なぜか?人間と同じでそれぞれの個性がある小麦。
そのいいところを科学の力(実際は地道な人工交配)によっていままでの品種が出てきました。
世界のでの食糧増産のみならず、自国の食糧確保や気候変動に耐えうる強い小麦は全て品種にかかっています。
“美味しくてタフな奴ら”が実際の畑現場にも必要なんです。
こちらや育種に携わる研究員の地道な努力の上に、我々生産者がいて、それを製粉して適正をみながら商品化にする方々やしいては消費者の皆さまがいるんです。
簡単に金がないから、時間がかかるからといって切っていい予算じゃないと断言できます。
もし本気で、今の政権が日本の小麦の食糧自給率を14%から30%まで上げようという野心的な数字を歌うのなら、黙って育種研究に国の未来を占う投資をすべきで、おおかれ少なかれ10年後には農業者人口は激減。農家よりも種を守りそして攻め続けることが重要だと思います。
なんでそこまで強調するの?ということですが立派な研究データがあります。
例えば、皆さん大好きなパン用小麦「はるゆたか」
今年もない・ない・売ってない・な~い、どこにあんの~??!!と叫んだんじゃありません?
答え:ない
一昨年に輪をかけて気象条件は厳しい年になったのはお伝えしてきたとおりです。
その中でも、「はるゆたか」は病気や穂発芽といって熟期がくると種のもつ自然摂理状の発芽症状が起きます。
するとデンプン質が変異してしまい、パンの生地ダレや膨らまない、生地がつながらないなどの結果になってしまいます。これは「はるゆたか」が私はそういう環境変化や湿気に敏感肌なのよ!と主張する個性なので、最悪雨が続いたりすると農家は畑で発芽してダメになっていく小麦を茫然を見つめているしか方法がないんです。
試験でも「はるきらり」のデンプンの変化、”低アミロ活性”は他品種に比べると発生しにくく、このあたりが雨に強いタフな奴ということです。
じゃ、テントかぶせたらいいんじゃないの?という方もいるかも?
テント持ってきてください。かなり足りないことに気づくと思います。それは無理です
だから品種なんです。
美味しくて、雨に強い。いろんな環境でも生き抜けるDNA。
それを人間が食べちゃうんですよ~罪ですね~。
絶対元気にならなきゃ小麦に申し訳ないです。
今回は麦類グループの小林研究員に「きたほなみ」の誕生背景と今後の肥料のやり方。下の写真が美味しい小麦をつくりたいと転職までしてきた小林研究員。
葉っぱの色で肥料の量を調節する葉色診断のやり方も教わりました。現場に是非持ち帰りたい方法の一つです。
それから、はるきらり」は同課の来嶋さんから説明をいただきました。
これからもっともっと、春小麦のパンや中華めん、ブレイクしていきましょう!
お忙しいところ、どうもありがとうございました。
私にとって新発見だったのは、
1.データ上、比較している言葉の”難、やや難、中、やや易、易”などは秋小麦と春小麦でその意味合いが違う度合いだということ。
2.秋小麦で300種、春小麦で200種の育種を北見農試で行っていること。
スゲェな~。収穫はバインダーか手刈りですって。それから製粉、パンや麺的性もみるんですよ~。
研究好きしかできない技ですね。
3.カビはほぼ種子伝播はしない。
4.お楽しみの新品種は”北見85号”と春小麦”北見72号”
まだまだ先の話ですが、厳しい選抜試験を抜けて”小麦ジャパン”のナショナルチームに早く入ってきてほしいものです。サッカーでいうとU-22。今年から本格普及してく「きたほなみ」「ゆめちから」「はるきらり」は新生のナショナルチームなんです。このチームワークも物議をかもしだすくらい楽しみな戦力ですよ~~ふふふ。
、
上記のように美味しい小麦を種から創る人たちがいます。
より美味しくなろう、タフになろうとしてきた親たちもいます。
もちろん、多くの方の応援あっての国産小麦です。
子育てに終わりはありませんよね。国もここにケチはつけてはいけません。
子供手当ならぬ、小麦手当は絶対必要です!!!
しかも、ゆとり教育ではない、超エリート選抜ですよ!
だれか、事業仕分けワーキンググループで言ってやって!私なら言っちゃいます。
農業政策の柱にもなりえる、基礎研究ですから。
当農場も頑張って生産に普及に努めたいと思っています。
こちらもどうぞ宜しくお願いします。
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