~第一話~
キタノカオリのチャバタ
クラストはサックリとフランスパンの様で、クラムは驚くほどしっとりしており、スライスすると大きな気泡がポコポコと入っている。
東京三宿「シニフィアン・シニフィエ」の志賀勝栄シェフのチャバタ。
「前田農産キタノカオリ100%使用」と書かれたショップカードと共に店頭に並んでいます。
チャバタというパンはイタリア発祥なのですが、
通称「志賀風チャバタ」は十勝管内のパン屋さんの店頭でもよく目にします。
キタノカオリ独特のクリーム色の生地、濃厚な小麦の香りさっくりとした歯切れの良さ。
キタノカオリという北海道の小麦の特性を最大限に生かしたパンなのです。
現在、国産のパン用小麦は大手の製パン会社も採用し、一般の消費者の間でも「春よ恋」「ゆめちから」という名前を耳にしたことがあると思います。
前田農産がパン用小麦生産を始めたおよそ10年前は、まだ知名度は低く、
「北海道小麦でパンを焼くことは、袴(ハカマ)を来てフェンシングをするようなものだ」
とあるパン職人から言われたこともありました。
私達は前田農産の生産するパン用小麦は、美味しいパンが焼けるのか、焼けないのか、その可能性や評価について、どこへ行って誰に聞いたら良いのか。
自分たちの小麦の可能性を調べていくうちに、国産の小麦を使っている、そして、古代小麦と言われるスペル小麦をはじめ、様々な小麦の特性を見極めて美味しいパンを焼いている、名店「シニフィアン・シニフィエ」のシェフ志賀勝栄氏の名前を何度も聞くようになりました。
そして、
その志賀シェフとの出会いは、予想外にすぐにやってきました。
2009年帯広市の主催で開催された第1回目のベーカリーキャンプ。
志賀シェフは北海道の小麦を使用したパンの講習会の講師を務める目的で来道し、小麦の生産現場の視察を目的とした畑ツアーの一行とともに前田農産の農場へ足を運んでくれました。
「国産の小麦を使い続ける」
志賀シェフは、当時のことをこのように語っています。
「北海道の豊かな農産物とそれを生産する農家との繋がりの素晴らしさを聞いていました。また、北海道の小麦が20年前の品質が上がっていると感じていましたので、今後も北海道の小麦を使っていくつもりで講師を引き受けたことは自然なことでした。」
実際に生産者と小麦畑を歩き、小麦の生育を確認し、収穫乾燥までの作業や工場などを実際に目で見て、生産現場の問題点や今後の課題を生産者と語り、
さらにベーカリーでの小麦の成分や品種の違いによる個性がどのように製パンに作用するのかを生産者に伝える、
「農業の未来について語り合ったのは前田さんが初めてですね。」
その後も志賀シェフは地元の熱いパン職人達が立ち上げた「十勝のパンをつくる会」の講師として、定期的に十勝を訪れ、製パン技術を伝え、十勝ならではの素材の活かし方などを提案しています。
学んだ技術を持ち帰った、地元のパン職人がそれぞれ独自のエッセンス加えて、店頭に並んでいるのが、北海道の小麦を使ったチャバタなのです。
<左からベーカリーキャンプ(小麦キャンプ)実行委員長のますやパン杉山政則社長、前田茂雄、志賀勝栄シェフ>
「前田さん!主食であるがゆえの安全性や美味しさについて語り合う中で、これからもずっとお互いに成長していきたいですね!」
志賀シェフから前田農産へのエールです。