The Road To 日本一長い111mピザ(完成編)

9月8日(土)、決戦の日は来た。
前日までに、食材集めに奔走し、下ごしらえを各チームにお願いし、自分達は会場準備のテントやイスや石窯設置。
ロープをはり、動線を考え、あれはこっちに、これはあっちにと。できるだけの準備を整えていった。
うれしいことに、この日の朝のスタッフの数は想像以上だ。
はじめてみる顔ぶれや、なじみの顔。
皆”私も楽しみたい!!”という顔に溢れている。
”あっ今日はお任せでイケるわ!”最初からそういう思わせる雰囲気だった。
今回たまたま日本一も目指すことになったのだが、そもそも論の
この長~いピザをやりたかった理由は
1. 本別町開町111周年のお祝であること。111年の歴史と先人たちの開拓から我々はこの地に活かされてます。皆で盛大にやるのも良いかな?なんて勝手に思った。
日本一はオマケ。111が1が三つならんで日本一なら、皆も将来覚えやすいかな?と。
2. 十勝・本別の地の食材を使って、皆が参加できる食のイベントにすること。アピール不足でなかなか知られてない農産物や生産者も多くいます。それにイベントは食だけではく、多くの資材や機材や場所も必要です。町つくりにも似ていて、一人や二人が頑張ったってどうしょもないですから。地元の農を地元の食とすることができれば、このうえない喜びになる。
何回かに分けて、説明してきたが、準備段階は人くどき。私の悪い癖は構想は長い間あるのですが、切羽詰まんないと人に相談しないこと。9月8日に開催でしたが、実際の動き出しは8月15日ころから(汗)。仲間集めは、農協青年部時代のブレーン4人と地元のすし屋の若手職人。“また、騙された~!”なんて笑顔で寄ってくる仲間がいないとこの手のイベントは上手くいきません!ただ誰もが共通しているのは“町に対する想い”。これはオリンピックで日本の選手を応援するのとはちょっと想いが違っていて、自分たちがどうにかしないと!というプレイヤーになる想いが強い。
男の話合いは生産性がなく、結局、実際にピザをやいてみたり、長いピザのビデオをみたりしながら進め、9月8日までに計3回の練習をもつという強行的な流れ。また運よくというか運命的に、十勝の食材でピザを作って町を元気にしよう!というボランティア団体の“十勝ピザ立国チーム” http://blog.goo.ne.jp/tokachipizza/e/51786e86968d2562b7772b6712c794b9の首脳陣との出会いもこのイベントの大切なポイント。彼らも自己記録である、十勝・大樹町の70.5mの日本記録の保持者たちでしたので、今回の提案は快諾!!100m以上をやってみたい!という気持ち満々。
こうなったら強い!やり隊同士がぶつかると掛け算みたくなります。
やらない方向ではなく、どうせやるんなら美味しいピザ、楽しめるピザ、記録よりも記憶に残る日本一のピザにしよう!と。
練習は3戦しましたが、正直1勝2敗のようなイメージ。
参照:The Raod to 日本一長いピザのストーリー読んでね!
問題は人の流れ、生地の状態、温度調整でした。しかも本番3日前にうちの石窯が崩落してしまうアクシデントも・・・。
肝を冷やす暇も忘れ、必死で時間に追われながら窯を補修!気がつけば、7本も石が折れてる!
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ほぼスタートで組み直し開始!心配してくれた門前農場の門前さんも助っ人で集まってもらい・・・
スタッフの松本さんとともに、“途切れない本別の歴史も、日本一達成をしたい参加者の皆の楽しみもある。
ここでどうにかしなきゃ前田農産らしくない!!”と動揺の中にも“改善”を施す窯に変身させたのです。
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作業は深夜まで続いた。改良点は3つ。
1.中段の石を12mm鉄板に変更⇒一枚120×90cmで200kgほどあるそうだが、後で分かるが鉄は熱で曲がる。20mmでも同じかもしれない。鋳物じゃないとこれは無理かなと思った。
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2.置き火式採用:今まで(バッフル方式=熱伝導型)のものよりもさらに直火を与えるため、耐熱煉瓦の遠赤外線効果も狙い、ビッちり石を置いた。⇒これも重さの関係で、横石が割れる原因となった。(もちろん補強はいれたのだが・・・)
3.PGSの空中ブランコ(ピザガイダンスシステム):空中ではないのだが、置き火式を考えると中吊りの仕組みが必要だったため、その調整できるような台を窯の前後にとりつけた。これも大正解!!
イベントについてだが、
今回、行政からの資金的バックアップは一切なし!!勝手な想いからの構想で、もしこういった形で町おこしのためにやりたいと思う方は、是非根回し上手になるか、スポンサー探しを上手にするのをお勧めします。今回は食材以外はほぼ全額手出し。アイディア、時間、人、物、金が上手く回らないとできないことです。それでもやりたかったです。この小さな町でも日本一の何かができるのであれば、可能性を信じて、それを皆と共有してみたかった。それだけでした。
 ただ嬉しいことも多くありました。食材提供者も資材を貸してくれた役場や商工会も快く日本一長いピザの主旨に参動してもらい、多くの食材が集まりました。“同じ釜のピザを喰う!”ボランティアのお母さんたちや、地元の農業大学校の先生や生徒も約40名が当日あつまってきてくれたのです。前日の野菜の仕込み、その前のトマトからのピザソース作り、生地の半焼成と。どんなピザになるのか不安と楽しみが交差します。
そのスペシャルチーム名が“チームほんべつ111(ワンワンワン)と十勝ピザ立国チーム”の混成ピザ部隊。さぁ、日本一への挑戦の始まりです。
9月8日は十勝晴れの快晴。気温は28度とかなり暑い予報でした。私たちが何せ心配したのは参加者の人数。だって大都市と違うんです。そんな簡単に人なんかきません。最悪、100人くらいかな~でもまてよ・・・・一人1.1mもピザ当たっちゃうぞ~。それは食べきれんしょ~!!“と。天気にも仲間のFacebookでの発信力,地元のマスコミ関係ももちろん、各学校や関係機関を練り歩いた結果、400人近い人達が集まってきました。
それでは、記憶よりも記録に残る日本一のピザのこだわりをご紹介しましょう!!
1. 地元の食材、資材をふんだんに使うこと。
2. 十勝・ほんべつには四季がある。約30mごとに春夏秋冬と食材をかえたエリアをつくり四季のピザを楽しんでもらう。
3. ほんべつ開町111年は歴史。10mの立て看板を作り、年号をいれピザの流れとともにタイムスリップする雰囲気をだす。
4. また、各時代のヒット曲を昭和40年~現在までの懐メロをかけて音楽参加者に楽しんでもらう。
5. 日本一達成の70,5m超え(71m)で、お祝花火点火。それから111m達成でさらにもう一発!
6. みんなで創ることに意味や歴史がある。ピザの具材のトッピング、それからピザ生地をゆっくりひきだすひっぱりを参加者全員に体験してもらうこと。
という聞くだけでも楽しいことづくめ。問題はというと完成までの3時間半ずっとピザ出来上がりを待たなければならない試練をこえられるかです(笑)。
参加者も我々も初めてのことでドキドキ、ワクワク。私は“111年の歴史は97万2000時間の中のたった3,4時間のできごと、歴史のようにゆっくりと着実にピザを焼いて最後に美味しくて日本一のピザを皆で楽しみましょう!!”となんて訳のわからない挨拶して開始~。
開始はお昼12:00のサイレン(うちの町はお昼をしらせるサイレンが鳴る)でスタート。1分30秒くらいで1mづつゆっくりと、ゆっくりと焼いていきます。もちろん、参加者たちは受付で参加費と日本一長い111mピザのスペシャルステッカーを胸にはり、トッピングをしてから、網のひっぱり隊を手伝います。
チームほんべつ111と十勝ピザ立国チームの石窯チームが焼き加減を慎重に見定めて、ピザ立国チームの大将の岩田さんに報告。岩田さんの掛け声のもと、ゆっくりとピザ焼きの網を皆でひきだします。トッピングチームは動き出したら止まれません。参加者に具材をトッピングさせて、指示をだしながら、また会話も楽しみながら進めていきます。
ここで皆さん、どうやってやるの?と不思議に思うと思いますが、要はトンネル型の石窯に焼き肉の網を111m連結させ、その上にアルミホイル、生地、トッピングとし、焼いたあとは巻段ボールの上にのせて、それを参加者皆で引き出すというのが流れなのです。一番気をつけなきゃいけないのは、網がきれること。これも10日前にうちの倉庫で内職したのでした。
日本一の内職中?
その網ですが、100円ショップにいって、“30cm×50cmの焼き肉の網を230枚(115m分)ください!”というと“業者の方ですか?”と言われたくらい。レジで“いったい俺は何をやってるんだろう!?と人間ぽくなった瞬間でした(笑)。
さて四季のピザは妻の提案でもありました。
同じ味で111m作るんじゃ、もし美味しくなかったときにどうすんの?とシビれることを言われ、そうだな~といっている間に4つの季節のピザのコンセプトを考案、それからパン教室の先生にも相談して、たった1週間前に変更。これは内部ではちょっと問題になりましたが、結果大成功でした。参加者の皆さんが口々に、“夏食べた?生バジル最高~!!“”冬のホワイトソース(これも地元のパン教室の先生が仕込んでくれた)美味しかった~“”え~秋がない、食べられてる・・・・“と口々にピザを探す感じ。また小学生の娘も学校で、上級生たちが、”日本一のピザ食った?超ウマかったぜ~!“と話すのを聞いてそうです。
春は“町花の紫つつじとエゾ山桜咲く野山“に、紫色のシャドークイーン(ジャガイモの一種)、玉ねぎ、それから豆の町ほんべつをアピールする金時豆で満開に。十勝ピザ立国チームオリジナルのトマトソース(これも大窯で返りトマトをTシャツに浴びながら作った力作!)山桜は、焼成後小エビで彩りました。JAほんべつや豆ではりきる母さんの会に豆や野菜の仕込みをお願いしました。やっぱり母ちゃんの味は不変です!!
春は、ひまわり原家と青い小麦畑がコンセプト。元気の出る黄色はとうもろし。青々とした小麦畑はピーマン。夏野菜の茄子と。焼き上がりには香漂う生バジルを乗せました。
本別にある農業大学校(農業後継者育成の大学校)から学生たちのつくった野菜をいただきました。
秋は、町の唯一のトマト農家の各務さん家の美味しいフレッシュトマト、かぼちゃにパプリカ。紅葉の赤、黄を演出。ベースはトマトソースではなく、オリーブオイルを使うことで、小麦の味と香り、野菜の甘みを引き出しました。
そして冬エリア。雪化粧は特性手創りホワイトソースに、十勝マッシュのマッシュルームとタマネギのクリーミーな味わいに。町自慢の黒豆(祝黒&キレイマメ使用)は雪原の足跡を表現しました。
四季を通じてかかせないチーズは地元の酪農家たちが、草と牛を育てた上にでてきたチーズ。ほんべつには、明治のチーズ工場があり、そこからゴーダとモッツァレラを食材提供していただけました。企業にも地元還元の意識があり、酪農家あっての工場や製品という心生きを感じています。
そして、ピザ生地は、前田農産提供の「きたほなみ&ゆめちから」。6対4でブレンドし、モチモチとしていてそれでいてクリスピーな生地に仕上がりました。ミステリーサークルアート2012in十勝・本別でお世話になったパン用強力小麦の超新生「ゆめちから」。日本一にこの小麦を連れていく!これが私の踏み倒したゆめちからに対する恩返しだと言い聞かせ、ここまできたのでした。
春から冬まで、平成24年から明治34年の本別町誕生まで、途中は懐メロをかけながら、約3時間半かけて完成!!実は111mトッピング完成した時点で、間違って花火を上げてしまい会場は騒然。“あれ?ほんべつ、気が早い人多いからな~”なんていってると、音響も気を利かせて、AKBの“フライングゲット”をタイムリーにかけてくれる演出も・・・(笑)。
しかもツイていたのはもう一発、予備の花火を持っていたこと。結局完成後、老若男女じいちゃんも、ばあちゃんも、父さんも母さんも、子供たちも皆で、ほんべつ町長の日本一万歳~!!!の挨拶で花火を打ち上げ、その後皆で美味しくピザを食べたのでした。結局、記録は113.7m!?と2年ほど先取りするくらいの、ぶっちぎり日本一の長いピザになったのです。
もちろん、皆笑顔、笑顔、笑顔!
スタッフ達も達成感にひたり、それぞれに“やったぜ!”という誇らしげな顔がありました。
編集後記として・・・
町の広報紙の表紙を飾ったのでした~パチパチパチ~
日本一ですからね、それに次の週の9月15日は111周年記念事業があったそうで、その前焼戦にもなったと思います。
広報担当の方、ありがとうございました~!!
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